当サイトは東日本大震災を被災したマンション管理組合関係者(マンション居住者、管理組合理事長・役員、管理会社担当者、管理員、工事担当者、設計事務所、マンション管理士等)の体験談を紹介しています。
皆さんのマンションにおける、今後の大規模災害対策の一助となれば幸いです。

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2011/11/07

W-01 福島県郡山市・管理組合理事長の体験談

取材地:福島県郡山市
取材日:2011年10月21日

――地震の当日はどこにいましたか?
 家内と2人で温泉に行って帰ってくる途中で、その時マンションにはいなかったんです。バイパスの丁度坂になってる所の中段辺りで地震に遭って。私はじめタイヤがパンクしたのかな?と思ったんですよ。そしたら前の車もみんな停まって、反対側のトラックがグラグラグラグラ揺れてるのね。だから私、阪神大震災の時陸橋が倒れたのを想像しちゃって、あっもうこれダメだな、と思ったんです。

――揺れの体感はかなりのものでしたか?
 すごいね。前の車もみんな停まったけども、やっぱり前のトラックの揺れ方が半端じゃなかったです。トラックがこーんなになっちゃって横転しそうな感じで。そして下の橋桁が3回ばかりガーンガーンガーン、って音したんですよ。丁度橋の上なものだからね。まだ新しいバイパスなんですけども、だけどあの時もうこの世の終わりだな、と私は思いましたね。地震がすぐ終わるんじゃなくて、すーごく長く感じたんですよ。いつまで揺れてたかな?、普通の地震だと大体ダダダダダと揺れて何秒かで終わるんですけど、何かもう2、3分、あんな長い地震初めて経験しました。

――こちらのマンションに着いたのは大分時間が経ってからですか?
 大体20分後くらいですね。ここに着いたら何人か居住者がいたんですけど、皆公園の方に避難していたんです。それで、もうおっかなくてマンションには入れないと言うんですよ。

 地震発生が2時46分ですよね?だから子ども達がまだ学校から帰ってなかったんです。小さい子どもがいたり、夜とか日曜日だったら皆バラバラになってパニックになってたんじゃないですかね。地震のあった時間帯が午後で、いる人が少なかったというのがよかったのか。後、ここの居住者というのは女性もほとんどパート勤めしてるので、残っていたのは管理人も含めて7、8人でそんなにいなかったんです。管理人さんに聞いたら、管理人さんもびっくりして表に出て、このマンションがあんなに揺れたのは初めて見た、と言って。マンションが左右にグラグラグラ揺れて倒れちゃうんじゃないか?!、って。私も皆のいる公園に行ったんですけど、ケガ人も無くて幸い建物だけでよかったと。命に別状も無くて、その方が大切だと思うべきなんじゃないかと。

――マンションの被害状況は酷かったですか?
 はい、私帰ってきて自分の家の確認に行こうとしたら、家内が危ないから行くなと言うんですね。私12階に住んでいるんですけども、エレベーターが停まっていたので12階まで非常階段を上って行ったんです。開けたらもうビックリ。家具から何から皆倒れてた。靴のまま居間の方に行ったんですが、テレビは倒れてパソコンも落ちて家の中がメチャメチャでした。いろんな物が散乱して足の踏み場も無いという感じだった。

 後で聞いたら、下の方はテレビもパソコンも何でもないよと言ってて、えー?!、と思ったんですけど。大体3階から8階くらいまでが酷いダメージを受けたみたいです。通路側の壁やベランダの所にヒビが入ったり、通風溝が外れたり。後日、私理事長やってますから、各家庭皆見せてもらったんですけど、酷かったです。

――マンションにいた居住者の混乱はありませんでしたか?
 混乱もそこまで無く。ただやっぱり皆怖がって、1週間から10日くらいは○○中学校とか、○○小学校に避難しました。ここに残った人は誰もいないですね。後、水が出なくなったんですよ。水と電気が使えなくなって。水は大体4日から5日くらいで復旧して、電気は翌日の午前1時頃には復旧したんです。明るさはよかったんですけど、でも中には入れなかったですね。

 だから学校に皆で集まって、お互いに連絡取れるようにここのマンションの人達は同じ所で。その時、お互いに何か連携が深まったような。今までマンションというと顔も分からない、朝出て行ってどこの人かも分からないんですけど、あの夜は皆帰ってきました。実家に帰った人や逃げた人もいますけど、大抵は帰ってきて、皆避難所にきて各々情報交換をして過ごしました。

――マンション居住者の方々との連携、連絡は取れていたのでしょうか?
 以前は連絡体制はあまりよくなかったですね。個人情報にこだわる人が結構多いんですよ。このマンションも15年経ちますから、だんだん高齢化が進んできて、病人や体の悪い人がいるとか。そういった事や、15年経つと賃貸が増えていくんです。そうすると賃貸してる人は結局借りてる人ですから、繋がりがなくなって、いつ入っていつ出たかが分からないんですよね。だから震災に遭ってからは、どこに行くか連絡先を表に書いてもらったんです。今日ここにいます、と。

 そして修繕だとか何とかあるでしょ?お金の問題とか、何をどうするんだとか。このままにしておけませんから。ここは大規模修繕工事が去年の7月に終わってまだ間もないんですよ。お金も無いんですよね。だからそういった面でどうするか話合ったんですけど、ほとんど皆がここに集まって話し合いが出来たというのは初めてでしたね。今まではマンションの総会というと形だけなんですよ。委任状が多くて、まあ勝手にやってください賛成します、というような人任せな感じで集まりが悪かったのですが、今は集まってくれるようになりました。

 地震後、ここは公開理事会を開いたんですよ。公開でやって全員入れたんです。何月何日公開理事会を開きます、理事会に参加できます、と広報をだして。その時に皆で情報を共有したんです。公開理事会をやった時に、○○マンション管理士事務所の○○代表から色々教えていただいて、やっと理解しました。ここは△△管理会社が担当しているんですけど、私達も分からなかったから大規模修繕工事でも何でも丸投げにしていたんですよ。

――管理会社さんの方にですか?
 何でもやって下さい、と言って。そしたら金額が凄く高くて。こうやって直し始まったら、皆あの時の大規模修繕工事の金額掛かりすぎたんじゃない?、なんて話になって。△△管理会社の言ったやつじゃなくて○○代表の話ている設計施工分離方式でやってみたらどうだろう?、という事で始まったんですよ。それで○○代表に世話をしてもらって。確かにここだけが被害があったわけじゃなくてこの辺り3件ともだし、それと市内に沢山マンションがあるんですけど、皆被害に遭ってるんです。特に○○通りが酷いんですよ。大規模半壊とかは実際一部ですけどね。ここは一部損壊で、じゃあどのくらい掛かるのか下見してもらったり。でも、市内のほとんどのマンション・アパートが被害受けてますから、中々施工業者も見つからなかったんですよ。それでいつから取り掛かるのかとか○○代表に話を聞いて施工業者を複数出していただいて、それが現在進んでるわけなんですけど。皆、ここの住居者喜んでるんです。やっぱり頼んで良かったなー、って。それで管理業務もその後のアフターケアも含めて工事中のやつもやってもらおうという雰囲気になっているんです。

 私達ここに入った時から△△管理会社が担当と最初から決まっていて、今思えば我々には一本化されていて選択肢がなかったんですね。まあそんなものか、と思ってたんですけど。△△管理会社は10年後はここはこうですよ、長期修繕計画にあるこの工事が必要ですよ、という計画を出してくるんですよ。私達も、あっそうですか、とそれに乗ってただけで。でもやっぱり今回やってみて、それおかしいんじゃない?、という意見が皆の中から湧き出てきたんです。

 △△管理会社が全ての管理費会計とか、修繕費をみんな管理してますから、財布はみんな分かってるわけで。だから高かったんじゃないのー?と居住者の人達は疑問に思ってますね。だからこれからは各マンション同士で連携して、情報交換をして、自分達の立場に合った計画作りをしていかないと。管理会社のレールに乗るんじゃなくて、自分達が作っていくという意識。今このマンションでは何でも任せてはダメだ、ということで、細かい部分や管理費も見直すべきじゃないか?、そういう意見まで出てくるようになりました。

 私達は素人ですので、管理会社さんからこれくらいのお金が掛かります、と言われてしまうと、そうなのかな?、と思ってしまう。だから何もない時はいいんですけども、こんな風になってお金が無くなったり、少なくなったりすると結局出しようがないから、皆から負担をお願いするしかないんですね。

――地震直後には管理会社さんからサポートなどはあったのでしょうか?
 管理会社からは、ブルーシートを用意してくれたとかそういうことでしたね。今日も管理会社の担当者が来たので会って話したんですけども、何というか、ここだけだといいんですけど福島市も担当してるんですよ。そして一人が11、2棟くらい担当してる。被害に遭ってるのはここだけではないんです。連絡が取れないんですね。それで緊急集会の時に管理会社の所長を呼んで、こういう忙しい時に一人にこんなに任せとくのおかしいでしょ?もう少し非常時には非常時の体制というものがあるんじゃないですか?、ということを私言ったんですけど、駄目ですね。今もそれは改善されてない。

 結局我々は管理会社に頼むしかないんですよ。電気だとか、エレベーター止まった時とか、何かというと管理会社なんです。管理会社は、はいはいとは聞くけど、対応は遅いですね。本当にイライラしました。だから居住者からは、この際管理会社を変えたらいいんじゃないか?、とかそういう意見が本当響くんですよね。

 総会、理事会なんかを回って聞いても管理会社の対応が凄くいいなんていうのはどこもないと思いますよ。今回のような非常事態の時には特に。ただ無理なものは無理なんです。1人で12、3棟も担当してること自体が。それも広域にね。それで担当者は福島市に行く。交通であっても丁度ガソリンのない時ですよね?、時間は掛かる。そうすると我慢する他ない。

 そしてこの受水層とか高架水槽が地震で揺れて水が漏れたんですよ。現在は直しましたけど、水漏れが半端じゃなかったです。ずーっと、ドッドッドッドッドッ、て出ていて、水どうなっちゃうんだろう?、と思いました。一番奥の高置水槽は7ヵ月過ぎた今もまだ直ってないんです。今度集会があるんですけども、これも早く予算決めてやるということになってるんですけどね。

――今現在の復旧工事の進み具合はどうですか?
 一ヶ所だけの見積もりじゃなくて、□□建設さんも入ってますので複数でやって。皆のお金を預かってるからなるべく一円でも無駄にしたくないんですよ。焦って△△工業の方で個別に足場設計するんじゃなくて、今13階まで足場いってますからそれをそのままでできませんか?と、□□建設の方に聞いたら、出来ますよと。そうすると管理組合としてメリットが大きいんですよね。重複してお金を払う必要がないし。

 今回の工事だって、このマンション1階から13階までありますけど、3階から8階までの階というのは非常に酷いんですね。上の階は中はグチャグチャになったけど建物自体はほとんど無傷なんですよ。3階から8階の人は中も大変だったけど、建物本体自体も大変なんです。被害の程度に格差がある。上の階は本当に直す所がないんですよ。かといって直さないわけにもいかない。だからその調和をどうするか。なるべく皆からお金を取らないようにして直せる方法がないか考えてやったんです。

 本当にね、○○マンション管理士事務所の○○代表に会わなかったらここまで信じてやれなかった。まだ工事が始まってない他のマンションの人に、早いねー!、って言われるんです。それが嬉しいね。皆も公開理事会で○○代表と顔合わせてるので、個人的に相談したりなんかしてるんです。○○代表もなるべく管理組合を通して言ってください、と困っているようですが。我々はそれだけ頼りにしてるということで、ほんとに頼んでよかったと思ってます。

――地震後の管理組合の対応について他のマンションの理事長さんなどに伝えたいことはありますか?
 お互いに連係を取りましょう、ということですね。マンション自体が横の繋がりがないんです。隣にあったって全く交流がありませんから。だから今後はそういったマンション同士、広域で情報交換ができるように理事役員の交流会みたいなのが必要になってくると思います。後、管理会社の言い成りにならない。自分達の、本当に自分達のマンションなんだから。管理会社の立場に立つんじゃなくて、自分達の計画作りができるような、そういう風にしていかなきゃならないなと思うんです。やっぱり自分達の立場に立ってどうするか。ただ、私達は素人の集まりですから、その時に、マンション管理士、という専門のコンサルタントの人に入ってもらって有効に活用してね。

――福島では原発の問題がありますが、放射能関係での居住者の反応はいかがですか?
 引越ししたのが何戸かありました。区分所有者は簡単に引っ越すわけにいかないけど、賃貸の方でかなりいましたね、建物が壊れたから住めないと。それに、割とここは家賃が高いから、こんな壊れた所にいれない、と出てった人もいますね。

 放射性物質の検査は管理組合でやってます。皆測る場所を決めて、それで庭とか、玄関とか、1階の部分はいくらとか、定期的に測ってモニタリングしてるんですね。

――行政や市に対して何か仰りたいことや要望はありますか?
 市も一生懸命やってるんですけども、対応が遅いですね。まあこんなものだと思って諦めてますけど。災害時に個人の家だけではなく、マンションにも融資制度を広げてほしいと思うんですね。落ち着いてくると、居住者の頭は工事のことやお金のことで一杯なんです。いくら掛かるのかとか、お金を払わなくちゃならないのか。最初の時はもう余震が酷くて逃げるのが精一杯だったんですけど、落ち着いてくるとだんだんそういう話になってきますので。自分の専有部分だったらある程度我慢出来ますけども、共用部分については全く融資制度が無いんですよ。廊下のタイルが落ちたり、これは共用部分ですから個人で直すものではないんですね。だから、マンションの共用部分で掛かったものについては補助制度をやるとか。行政では個人の関係は随分出るんですけども、マンションの補助金関係が全く出ないのでそれを要望したいですね。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

(聞き手:宍戸正幸 本サイト事務局編集部)

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