Y-03 建築士事務所の体験談03(主要構造部・雑壁)
主要構造部(構造耐力上主要な部分)と雑壁について
今回の地震被害の特徴
・福島県内においては、構造耐力上主要な部分への甚大な被害があった分譲マンションは少なかったように感じている。
・しかし、柱の柱脚近くや柱頭近くに、曲げによるクラック(ひび割れ、0.2mm以下のものが多い)が見られるマンションは多数ある。
・梁も、梁中央付近や、梁端から1/4や1/3位の位置に、垂直方向のクラック(0.2mm以下のものが多い)が見られるマンションや、梁端部圧縮側(上半分)に、斜めのクラックが入っている例は多く見られる。
・一方、非耐力壁であるRC造のいわゆる「雑壁」にはせん断ひび割れ(X字のひび割れ・せん断割裂)による被害が甚大である。
・バルコニー側は、掃き出し窓~掃き出し窓間の(多くの場合、エアコンが設置される)雑壁や、廊下側では、SD廻りのインターホンの付く壁等で顕著である。
・乾式(RCフレーム+ALC等)のマンションでは、雑壁にあたるALCの破損は今のところ多くは聞かないが(そもそも乾式のマンションが県内には少ない)、シーリングの切れ、1fのRC造雑壁のひび割れが見られる。
・柱・梁のひび割れ状況は、乾式・湿式ともに同程度と感じている。
・雑壁の壊れについては、「構造体力上の安全性」というより、「機能性」「居住性」「安心感」という面から、居住者・区分所有者には非常にストレスを与えていると感じる。
・建物の被害の特徴は、高層建物(10~14階)の建物がより「ひどい」印象がある。その多くは新耐震基準で建っているが、4~6階建ての旧耐震基準の建物より、ひび割れが目立つものが多い。
・これは、今後の研究等を待つしかないが、「地震動の継続時間の長さ」「長い固有周期が卓越した地震動が建物の固有周期と合ってしまった」などの原因も考えられるのではないかと思う。
・例えば・・・14階x2.8mx0.02=0.8秒
・宮城県仙台市の地域係数Z=1.0、福島県福島市の地域係数Z=1.0、福島県郡山市の地域係数Z=0.9。
(続く)
(参考)
※主要構造部(建築基準法第2条第二号) ・・・壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。
※構造耐力上主要な部分(建築基準法施行令第1条第三号) ・・・基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。
(参考・略算)
RC・SRC造建物の固有周期T=高さ(m)×0.02
S造建物の固有周期T=高さ(m)×0.03
(参考)
地震地域係数(国土交通省告示1793号)



(鈴木裕人 マンションサポート福島代表 マンション管理士・一級建築士)









