当サイトは東日本大震災を被災したマンション管理組合関係者(マンション居住者、管理組合理事長・役員、管理会社担当者、管理員、工事担当者、設計事務所、マンション管理士等)の体験談を紹介しています。
皆さんのマンションにおける、今後の大規模災害対策の一助となれば幸いです。

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2012/04/01

B-05 宮城県仙台市Iマンション・管理員の体験談

取材地:宮城県仙台市
取材日:2011年7月25日
――この度の被災についてお見舞い申し上げます。早速ですが地震が起きた当時なんですが、どちらにいらっしゃいましたか?
管理事務室にいたんですよ、ここで水を飲んでいた時にガタンと来たんですよね。2回地震がきたんです、最初、縦にきてそれから横にきました。ガタガタなっ て、まずどうしようもなかったですね。すぐにエレベーターを見たら3階でストップしている状態で、中に人がいないかどうかを確認しました。そういった事を 一応報告書に書いておいたんです。
後は停電して電気が消えました。全部消えてどうしようもなかったですね。ここは店舗が結構あるんですよ、その お客さんが階段から降りてきて、そこでうずくまってるもんだから。もうそのまま出てきたって言う感じで。ここはマンションなんですが、90%はもう店舗と 事務所なんですよね。地下も店舗。マンションというより事務所ビル、雑居ビルという感じですよね。

――一般のマンションみたいに住んでる方で昼間いた少しの方が避難するというよりも、むしろその時の方が人が働いていて、たくさん人がいたんですね?
いたわけですね。どこかに避難したと言うよりも、皆さん全員建物内に居ました。避難とかそういうのではなくて、もうほとんど家の中に居ました。そしてここは1DK、大きくて2DKかな、だから物がだいぶ倒れていたようです。あんまり動くとかなかったですね。

ですので、避難される方のお手伝いもなかったです。それでまず、一人住まいの方も結構いらしゃるんで、そういうところは一応声をかけて確認はしたんですけ ど。そういう確認が終わった後で、区分所有者で一人住まいの所で物が大分倒れてるんだと聞いて手伝ったりしました。特に怪我とかもなかったですね。

――住居系のところとは違って、近くの避難所に避難する事もなく、当日は時間までこちらで勤務されてご自宅に帰れたんですか?
そうですね。そして次が土曜かな、金曜日に発生だから、土曜日ですよね。勤務は土曜までです。土曜日も私、自転車で来てますから。だけど、来ても電気は消 えている。受水槽は、高架と中層とそれから地下にあって、地下が大きいんですよ、3万リットル。地下に行ったらそれが、もうバッバッバッバッと亀裂が入っ て、ネジの間からこう水が漏れてる。そんなにねドーッと出てるとか曲がっているという事はなかったですけどね。高架水槽は大丈夫だったですね。

――ライフラインはいつぐらいに復旧したんですか?
電気は月曜日。14日の月曜日に復旧したんですよ。断水はしなくて水道は出ていました。エレベーターは1週間かかりました、18日ですね。ガスはしばらく駄目だった、2週間ぐらいかかった。

上の階にお住まいの方は大変でした。1回下に降りたら、もう住戸に上がらなくて。3人ぐらいで仙台市の県庁の方へ行って、県庁の方で避難してたのかな。後で県庁の方に3人居ますからって電話がきました。

――ライフラインが早く復旧したのであれば店舗や事務所も週明けから?
来てないですよ。土曜日も来ないですから。月曜日に少し店舗を見に来たぐらいで、後はすぐ帰ってました。ご自宅の方でもいろいろとありますしね。営業しているところは少なかったです。

問題は漏水。下の店舗の方に漏水していて、どこが原因なのか解からないんですよ。ポタポタと天井から落ちてる。落ちている場所は見ればわかるが、また止ま る。漏ったり止まったり。どこが原因なのかつかめなくて。業者も今すぐ来れない、もう少し様子を見る事で2~3日様子見て来てもらって、それでも原因が解 からなくてね。2階、3階、3号室の系列がだいぶやられてるんですよ。

これに書いてあるとおり、罹災証明で大規模半壊でした。うちでも だいぶ外壁が落ちましたから。落ちた外壁が人にあたったりはしませんでした。本当に予想外の地震でした。この建物は、もう築28年くらいになりますね。 13階建てで、約60世帯あります。現在住んでいる方は13人ぐらいですか。地震後、届出が出ているのを合わせて3軒退去するような形になります。

――大規模半壊ですと、各お部屋でも見舞金だとか住宅の応急修理制度だとか大変ですね。
そういった制度で大変ですね。マンションの共有部分としての罹災証明。専有部分の罹災証明も当然やるでしょうから、個人個人で経営者・所有者が、市の方に行って手続きをしてですね。


――補修工事の計画は?
管理組合の理事会で月2回ずつやってますね。3月末から、4月 5月 6月 7月と。臨時総会が8月7日です。補修工事の業者と予算も大体見積もってもらっています。総会で承認を得て、秋から、9月末か10月から工事が始まるんじゃないかな。

理事長はここに事務所を設けて、別にお住まいをしているが、こちらに泊まったりもしています。管理組合の役員には、この中の会社の社長ご自身もいます。不動産などの事業をしている方もいて、情報交換も早いからそういう点では、いいんじゃないかと思います。

――管理会社さんとの連絡は、土曜日に取れたぐらいですか?
電話は通じなくて、フロントとのやり取りは直接来て頂きました。フロントの方達は自転車で来ました、月曜日に来ましたね。

(ここから理事長へのインタビュー)
――皆さんの体験談をお伺いしたいと参りました。
分かりました。是非、全国に被害の状況を伝えて下さい。

今回の震災害は、まさに未曾有の災害であると同時に、これからも度々起こる事じゃないと思いますが、マンションが東北では、仙台を中心にたくさんあります よね。分譲マンションであれ、居住の形態としてこういう集合住宅はこれからも大いに普及していくと思うし、これからも昔のようにではなくても増えると思い ます。建築する時に、万全な体制で安全を課す考えで、今回をいい教訓として役立ててもらいたいですよ。

災害にあったマンションの復旧を 早く急がなくてはいけないのと同時に、うちのマンションは相当な被害を受けているけど、他と比べればもっと酷いとこもある。軽い重いに関わらず早く復旧が 進んで欲しい。マンションに限って言えば、そのようなところでありますね。沿岸地域の津波の被害が甚大なものであるのを考えると声高には言えないけど、マ ンションに関して話を限定すればそう思います。それを広報活動で広めてもらいたいと思います。

ここは、元々は居住マンションとして分譲 したんです。場所がいいために区分所有者、買った人達がみんなそれぞれ賃貸に出してこのような形になってますね。場所の良さということで商業ビルになって きてますね。もともとは居住者用のマンションですが、今の現状は特殊な状態ですよね。そのため管理業務が大変で、この管理人さんが一生懸命やってくれて る。区分所有者としても助かっていますね。今後の課題としては地震災害、今後のことを考えていきたと思います。

――8月7日にも臨時総会で改修工事の段取りがついたと伺いました。
段取りはつきました。これから補強工事をするうえでの工事の経費の問題、見積もりが出来上がってきましたのでね、それをどのように精査していくかと、いつ から工事にかかるか、ということ。災害をうけたマンションが多数あるもんですから、復旧工事に携わる業者も大変なんですよ。優先順位をつけるわけではない けども大変なところを先にやるとかね。公共事業も多いのでいろいろ時間を注がないといけないから、業者もまわってこない。しかし一刻も早く復旧してほし い。今も外壁にネットがかかっているでしょ。見てくれも悪いしね、マンションのイメージにもよくない。

その為にも役員会を結構頻繁に行いました。震災から10回か、毎月2回ぐらいはやってますね。これから総会を、年度の締めで全体の会議をやりますんでね、そこでもって皆さんの承認を得なければいけない大事な時なんですね。
(理事長へのインタビュー了)

――地震の後にこれまでと何か変わった事はありましたか?
ここはオートロックじゃないから出入りが確認できないので、私がいない時間帯のエントランスホールは無人なんですね。24時間営業している店もあるし、私 が帰った後は分からないんです。たまたま理事長が事務所にいるから、ある程度は把握できていますが。それで、エレベーターの使用の回転数が凄いんですよ。 エレベーターの点検を月2回やってるんです。前は15日間で1万回転してたんですよ。だから月2回で2万回転くらいしてたんです。結構ここは利用数が多い とこですから。

それで、以前の勤務は朝9時から夕方5時までだったんですが、ここは非常に出入りもあって、人通りも結構あるので、時間を1時間早く来るようにずらしたんです。朝を8時に。ゴミがすごいんですよ、営業ゴミではなく、家庭ゴミがすごい。

収集の車が8時50分頃に来る、それまでにそのゴミをちゃんとしておかないといけない。ごちゃごちゃで誰が投げて行ったのかわからないような状態で、普通のビニール袋に入れて投げて行く人もいるし、凄いですここは。最近は大分改善はされてきた感じですけど。  

区分所有者が別なものですから、賃貸で利用している事務所の方、店舗の方には常々、口頭で、「こういう行事がある、○○がある。○○をやる」と言っていま す。結局、賃貸の方は張り紙を見ないんですよ。区分所有者の方には話したくても、いちいち電話するわけいかない。お伝えするのが難しい。

明日も貯水槽清掃をやるのに文書を貼ってはいるけども、電話しないと分かってもらえない。賃貸でご利用している方は電話で確認をとってます。水出ないよ、なんて来られても困るし。ここは普通のマンションではないので、他のマンションの答えとは違うと思うんですよね。

――他のマンションの管理人さんや管理会社さんに伝えたい事はありますか?
このマンションの外部の舗装は地震前まで工事中だったんですが、3月に工事が完了して、その後地震発生ですからね。舗装が綺麗になってから3月11日の大 地震がきたんです。路上にいた人も地震が起きて、そこの階段にいた方も中に入ってもらってエントランスに自由に入ってもらって、そうしないと、外壁がどん どん落ちてきますから。けっこう大きい外壁が落ちてきたんですよ。危ないですよ。間一髪だった。

――貴重なお話ありがとうございました。

(聞き手:鈴木裕人 マンションサポート福島代表・マンション管理士)

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